ワタクシ松岡優紀
今までずっと気になっていたことを
今日こそは聞き出してみせます

白黒はっきりさせてもらうわよ
隠し通そうったって そうはいかないんだから












girl's talk











「だから何でも無いって言ってるじゃない。」

そう冗談ぽく笑いかける私の友人は、目の前のイチゴパフェを美味しそうに一口また一口と口に含んだ。その度に美味しい、と感嘆の声を漏らしながら目を輝かせている。なんて楽観的というか単純というか。まさに色気より食い気。そんな言葉が似合ってしまう女子高生って、どうなんだろう。

それと対照的に私は目の前のレアチーズケーキには目もくれず、パフェに夢中の友人をじいと見つめた。口にこそ出さなかったが、またそんな嘘言って、と言わんばかりの顔つきで。そんな私の視線に漸く気が付いたのか、一旦パフェを食べる手を止め、不思議そうにこちらを見つめ返した。

「何よ、優紀。そんなに見つめてくれちゃって。」
「別に。ただ変なのって思って。」

その通り、変なのである。何がって、二人の関係が。
最近友人の様子がどうもおかしい。まぁおかしいといっても、手鏡を持つようになったとか、化粧するようになった、だとか普通の女子高生なら当たり前のことなのだが。でも普段の友人をよく知っている私にしてみれば、それは大した大快挙というか何というか。とにかく、これは何かある。絶対に何かある。



私の言った意味がよく理解出来なかったのか、友人は口の端にバニラアイスをつけたまま、ぽかんとしたように私の顔を見ている。間抜けな顔して、この子ったら。アイスついてるわよ、ととりあえず教えてあげた。

私もようやくチーズケーキを小さく口に含む。ああ、このまったりとした濃厚な味わい。ここのケーキ本当に美味しいのよね。先程の友人のように、私もまた目の前の甘い塊にうっとりとした。頭の隅っこの方で、体重計に乗って口をぱくぱくさせている自分を思い出したような気がしたが、今となってはどうでもいい記憶である。ダイエットはまた明日からでいいや。そんなことをぼんやりと頭の隅で考えながら手を進めていると、前方から何やら視線を感じる。納得できないとでも言うような顔つきで友人は口を開いた。

「ねえ、変って何なの。」
「何って、そのまんまの意味。」
「なあにそれ。意味分かんないよ〜。」
「本当に付き合ってないの?花沢さんと。」

こくり、と友人はパフェ用の細長いスプーンを口に咥えたまま頷く。その動作でスプーンの持ち手の先に付いている小さな鈴がちりんと鳴った。小さな鈴の両脇には、二人の可愛らしい天使が寄り添っていた。


「いつも一緒にいるわよね。」
「だって居心地いいから。」
「そういえば、この前電話した時も隣にいた気がするんだけど。」
「たまたまよ。」
「学校も一緒に行ってるんだって?」
「うん。いつの間にか。」

平然とそう言い述べてしまう友人の表情は、いつものようにけろりとしていた。その言葉から特別な意は含まれていないことが分かっていたので、ううんやっぱなんでもない、とだけ言って再びケーキを口に含んだ。それを合図に友人もまた先程よりも少し溶けてしまったパフェを口に含むのだった。

「ねー、優紀。ちょっとだけチーズケーキちょうだい。」
「はいはい。」

食いしん坊にチーズケーキのお皿を差し出してやる。ぱくりと小さく一口。

「うわー美味しいなこれ。私も今度これ頼もうっと。」
「でしょ。この店はチーズケーキが一番なのよ。」
「それじゃ、はい。」

パフェあげる、と友人は白い塊と化したパフェを私の方によこした。私もぱくりと一口。

「冷たい。」
「だってアイスクリームだもん。」

にこりと笑う友人の笑顔はいつものように輝いている。この笑顔を守ってきたのは、きっと花沢さんなんだろう。でも、この超がつくほどの鈍感な友人に苦労してる彼の努力を思うと、なんだか手を合わせたい気持ちになった。(余計なお世話かも知れないけれど)



この子が幸せなら、笑顔でいられるのなら、私も幸せ。



もう一口ぱくりとパフェを口に含んだ。少し溶けたパフェは滑らかに喉を通ってゆく。
先程のように鈴が小さくちりんと鳴ったのを耳にしながら、私も笑った。






07/7/17



女同士のちょっとした会話。珍しく女の子だけの登場です。

つくしちゃんは鈍感っ子してます。類くん苦労してます、きっと。
うーん、でも、苦労してる類くんも見てみたいですよね。
結果的に「俺が好きなのはあんただよ」とか顔赤くして言ってくれれば、もう何も言うまい・・・!!!笑